2020.07.21 2022.10.03

奨学金を任意整理(債務整理)することができるのでしょうか?

奨学金を任意整理(債務整理)することができるのでしょうか?

債務整理のご相談を受ける中で,近年,よく聞かれるのが,学生時代の奨学金を返すのが困難になっているが,保証人になってもらった親(又は親類)に迷惑をかけるわけにはいかないので,自己破産や個人再生は回避したいという内容です。

また,子どもの奨学金を申請したいが,親が債務整理中であっても奨学金の申請ができるのかというご相談も時々聞くことがあります。

奨学金も借金の一種ではありますので,債務整理を行う場合の対象となりえますが,どのような方法がとれるのかということ,奨学金の支払負担を減らす方法,債務整理中の奨学金申請の可否等等について,ご説明いたします。

奨学金を債務整理する方法とは?

奨学金も債務の1つですので,債務整理の手続を取ることは可能です。通常,個人の債務整理に関しては,任意整理,個人再生,自己破産の3種類がありますが,各々についてご説明いたします。

奨学金には,両親や親族が連帯保証人になっている場合と,機関保証という保証会社が連帯保証人になることで両親や親族が連帯保証人になっていない場合があります。

いずれかの場合によって,両親や親族にまで影響を及ぼすのか,そうでないかは変わりますので,

場合を分けて解説させていただきます。

両親や親族が連帯保証人になっている場合に,どの債務整理手続きをとるべきか?

両親や親族が奨学金の連帯保証人になっているかどうかを調べる方法

まずは,両親や親族が奨学金の連帯保証人になっているかどうかは,奨学金を貸してくれた債権者(日本学生支援機構などが多いと思われます。)に連絡して確認をしてください。

両親や親族が奨学金の連帯保証人になっている場合

この場合には,破産や個人再生の手続きを取ると,連帯保証人である両親や親族に保証債務を履行するように請求が行くことになり,両親や親族に迷惑をかけてしまうことになります。

そこで,これらの方に迷惑をかけないためには,奨学金の債権者以外の債権者に対してだけ任意整理を行っていくことが考えられます。

任意整理

ここで,任意整理は,債権者と交渉して,利息・遅延損害金をカットして,元金のみを分割弁済していくようにするのが原則的な方法です。

奨学金は無利子か3%以下の利率であることから,通常の任意整理をするメリットは認められませんし,申込みの際に保護者(親)又は親族等を連帯保証人として申込みをしていますので,任意整理の申込みをしたことで連帯保証人に対して請求をされても,文句は言えません。

また,基本的には,奨学金の貸付先である奨学事業実施団体側は,元々が無利子又は低利率での貸付であることから,任意整理には応じてくれないのが現状ですので,奨学金の債権者に対して任意整理をするメリットは基本的にないと言えるでしょう。

どうしても,任意整理の方法を取るのであれば,奨学金に関してはこれまで通り支払を続け,他の債権者(銀行,クレジットカード会社,消費者金融会社等)への債務について任意整理を試み,毎月の支払総額を低く抑えることができるようにするという方法になります。

個人再生

個人再生は,裁判所に申立てて,住宅ローン以外の借金を5分の1程度に圧縮したうえで,その金額を原則3年で支払っていく方法です。

自己破産と異なり,安定した収入があって,資金的な手当ができるのであれば,持家を維持しながら支払っていくことも可能ですし,資格制限も受けませんが,保証人には請求が行くことになりますので,親や親族が保証人になっている場合には,自己破産の場合と同様に保証人へ請求が行くことになりますので,保証人も債務整理手続が必要になる場合もあります。ただし,保証人が今まで通りの月返済額で奨学金を返済していける場合もあります。

自己破産

自己破産は,裁判所に申立てて,免責決定を受けると税金や損害賠償債務等を除く債務全てが免除されます。

しかしながら,原則として,自分の資産もすべて吐き出さなくてはいけませんし,家が持家の場合には賃貸物件を借りる段取りも必要となります。

0からの再出発になりますので,それなりの覚悟が必要な手続であるといえます。

また,個人再生と同様に,保証人には請求が行きますので,場合によっては,保証人も債務整理手続が必要になる場合もあります。ただし,保証人が今まで通りの月返済額で奨学金を返済していける場合もあります。

両親や親族が奨学金の連帯保証人になっていない場合(機関保証の場合)

この場合には,破産や個人再生の手続きを取ったとしても,両親や親族は連帯保証人ではないので,両親や親族に迷惑をかけることはありません。

ですから,各種の債務整理のメリット,デメリットを考慮して,手続きを取っていただければ大丈夫です。

奨学金の返済が厳しいときの救済措置は?

奨学事業実施団体側では,奨学金の返済が厳しくなった方のために救済制度を用意してありますので,その制度を利用する方法があります。

減額返還制度

毎月の返済額を2分の1若しくは3分の1に減額できます。もちろん,毎月の返済額が減額される分,返済期間が2倍から3倍に伸びますので,返済総額は変わりませんが,毎月の負担額は軽減できます。

返済期限猶予制度

最長で10年間は,返済を一時停止してもらえる制度です。単に支払を先延ばしにしてもらえるというだけですが,その間,他の債務を弁済しやすくもなりますし,(1)の減額返還制度を利用するより,他の債権者への債務を早く完済できる可能性は高くなります。

所得連動返還型無利子奨学制度

無利子の第一種奨学金に限られますが,年収が300万円を超えるまで返済を猶予してもらう又は所得に応じて返済額が減額される制度です。期間の制限はありませんが,返済総額が軽減されるものではありませんし,要件も上記(1)(2)より厳しくなります。

いずれも,所得制限等の要件がありますので,詳しくは奨学金を受けている奨学事業支援団体にお問い合わせください。

また,このような救済措置を受けることができれば,他の債権者に対して任意整理を行うという方法も取りやすくなりますので,返済が苦しくなった時点でまず問い合わせされることをお勧めいたします。

親が債務整理中に子どもの奨学金申請ができるのか?

奨学金は子ども自身が借入人となりますので,親が債務整理中であっても,子どもが信用情報の問題がなければ,奨学金の審査に通る可能性はあります。

ただし,奨学金の申請には連帯保証人が必要となりますので,債務整理中の親が連帯保証人となると審査が通らない可能性が高くなることは否めません。

そこで,両親の一方が債務整理をしていなければその親か,親戚の方に連帯保証人になってもらえるのであれば,親が債務整理中であっても,奨学金の申請は可能であるということになります。

もしくは,機関保証を利用すれば,奨学金を借りることは可能でしょう。

信頼できる弁護士に依頼しましょう!

奨学金は単なる借入金とは異なった性質のものではありますが,やはり債務であることに変わりはありませんので,約定どおりの支払が苦しい状態になったときには,まずは奨学事業支援団体に相談して,救済措置を受けることができないかを検討してみるべきですが,奨学金の支払が厳しい状態というのは他にも債務を負っていることがほとんどでしょうから,その支払をどうすべきかということも含めて,債務整理の豊富な経験を有する当事務所に早急にご相談ください。

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